歯並びをきれいにするために矯正治療を行っている人は多いのではないでしょうか。
矯正治療は装置を口の中に装着するので違和感を感じますよね。
しかし、違和感を我慢して矯正期間が終了しても、治療は完了していません。

実は矯正治療の後に保定という治療を行わないと、矯正治療を行う前に後戻りしてしまいます。
せっかく我慢して矯正治療したのに元の歯並びの悪い状態に後戻りなんて嫌ですよね。

そこで今回は後戻りをしてしまう原因と、後戻りをしないために行う保定についてご紹介します。
しっかりと矯正後の知識を持っておくことで、ずっと続く美しい歯並びを手に入れましょう。

歯列矯正は装置が外れたら終わりではなく、リテーナー(保定装置)で歯や噛み合わせを維持させる期間があります。
この期間を「保定期間」といいます。
実はこの保定期間がとても大切です。
この期間の過ごし方によって、きれいな歯並びを長く保てるかが決まります。

ここではリテーナーの目的や種類、期間、なくした時や壊れた時のトラブル対処法についてもご紹介しています。

1.矯正治療の「後戻り」ってなに?

矯正治療の「後戻り」とは、矯正治療によってきれいに揃った歯並びが元に戻ってしまう現象のことを言います。
矯正治療が終わったばかりで装置を外した直後の歯は、歯の周囲の骨が安定していないのでとても動きやすくなっています。
その状態で歯を放置しておくと、治療前の元々の位置に戻ろうします。
これはどのような治療方法をおこなった場合でも同様に起こります。

2.後戻りの原因は何?

2-1.保定が不十分

後戻りの最も大きな理由としては、保定期間に保定装置の装着を怠ってしまうことが挙げられます。
矯正治療は「歯を動かす」ための治療と、「歯を固定する」ための治療の2つを経て、初めて完了となります。

治療を経てきれいになった歯並びを固定・安定させる治療のことを保定と呼びます。歯並びを安定させる際には、リテーナーと呼ばれる保定装置を使用します。
歯を整える・並べる治療が完了したと思って保定装置の装着を怠ってしまうと、元の歯並びに後戻りしてしまいます。

2-2.歯並びを悪くする生活習慣

生活習慣が原因で歯並びが悪くなってしまうこともあります。
生活習慣によって歯や骨格にかかる力は、矯正装置の数倍とも言われています。
せっかく矯正治療を行ってきれいな歯並びになったとしても、生活習慣によって継続的に力がかかってしまうことで歯は簡単に動いてしまいます。
歯並びが悪くなるような生活習慣は治療期間中に治しておきましょう。
また、治したほうが良い生活習慣は以下の通りです。

  • ・口呼吸
  • ・唇の巻き込み
  • ・頬杖
  • ・横向き寝やうつ伏せ寝
  • ・舌を前に押し出す
  • ・指しゃぶり(子供の場合)

2-3.親知らずが原因で起きる後戻り

親知らずの生える方向によっては後戻りを起こす可能性があります。
親知らずが真っ直ぐに生えている場合は特に問題はないのですが、横向きに生えている状態は前方の歯に絶えず力がかかっているので前歯の歯並びが悪くなる恐れがあります。
下の歯によく見られる傾向です。

3.また治療しなきゃいけないの?

矯正治療をした後に後戻りをしてしまったら、残念ながらもう一度矯正治療を行う必要があります。
以下に、代表的な2つの治療方法をご紹介します。

3-1.マウスピースによる再治療

後戻りしてしまった際は、部分的に歯列が乱れている場合がほとんどです。
軽度の後戻りなどの場合は、マウスピースによる再治療でカバーすることも可能です。
ワイヤーによる治療と比べて、治療をする際の負担も小さく、取り外しもできるため、後戻りの際におすすめの治療方法です。
また、透明で目立ちにくいので、外出する際にも矯正していることを気づかれにくい点もメリットと言えるでしょう。

3-2.ワイヤー矯正による治療

後戻りの歯列の状態によっては、ワイヤーを使用する矯正治療をおこなう場合もあります。
実際の後戻りのレベルにもよりますが、部分矯正といって歯列の乱れた一部のみにワイヤーをつけて治療することもあります。

4.後戻りを防ぐために保定装置を付けよう

矯正治療には、上述したマウスピース矯正やワイヤー矯正だけではなく、矯正用のミニインプラントを利用したインプラント矯正、部分的な歯列の乱れを整える部分矯正などたくさんの種類があります。
どんな治療方法だったとしても後戻りは起きる可能性があります。
ここからは、後戻りを防ぐためにはどのようにしたらいいのかを紹介していきます。

4-1.矯正治療後には必ず保定装置を付ける

「歯を動かす」ための矯正治療を行った後は、保定と呼ばれる「歯を固定する」ための矯正治療を行う必要があり、保定のための装置(リテーナー)をつけなければなりません。
歯を動かした後は歯の周りの骨が不安定なことに加え、歯の周りの歯肉繊維が歯を元々の位置へ戻そうとするため、放っておくと後戻りをしてしまいます。
保定装置は、矯正で整った歯並びや噛み合わせをキープし、治療の仕上げを行う装置と言えるでしょう。

4-2.保定装置の種類

リテーナーにはさまざまな種類が存在しています。ここでは6つのリテーナーについてご紹介します。

ベッグタイプリテーナーは、歯列全体をワイヤーで取り囲み、歯の移動を防ぐものです。

ホーレータイプリテーナーは、ベッグタイプと違い、主に前歯部分をワイヤーで取り囲み、歯の移動を防ぐものです。

スプリングリテーナーは、後戻りしやすい下の前歯によく使われ、とてもコンパクトで使用感が良いです。

トゥースポジショナーは、シリコンで作られており、ワイヤー矯正治療後に見られる軽度の歯列の乱れを修正することができる装置で、保定装置としても活用できます。

インビジブルリテーナーは、透明な薄いシートでできており、見た目が良いので日中も使用できます。しかし、噛みしめ等の力によっては破損してしまうこともあります。

フィックスリテーナーは、前歯の裏側に直接接着する保定方法で、長期間装着することが多いです。

4-3.装着期間

保定装置は取り外し可能な装置であっても、24時間の装着が推奨されます。
しかし、食事や歯磨きの際は取り外すことができ、矯正装置のように強い力がかかるわけではないのでストレスは大きく軽減されるでしょう。
矯正治療が終わってからも装置を装着しなければいけないので煩わしい気持ちもあるかとは思いますが、後戻りしないためにも我慢して装着するようにしましょう。
また、保定期間は矯正装置をつけていたのと同じ期間を目安に設定されます。
2年の矯正期間なら保定期間も2年で、治療期間は合計で4年となります。
しかし、骨が徐々に安定してきたら装着する時間を少しずつ短くしていくので、かかるストレスも徐々に軽減されていきます。

※期間はあくまでも目安です。

4-4.保定装置の費用

保定装置の費用は約3〜5万円で、定期的に行われる医院での料金が約5,000円程度かかるところもあります。あらかじめ治療費や保定装置の費用などをまとめて提示してくれる医院もあるので、前もって確認するようにしましょう。

5.後戻り防止のために日常生活で注意すること

5-1.悪い舌癖を治そう

生活習慣が後戻りに影響していることは上述しましたが、その中でも特に気をつけなければならないのが舌の悪い癖です。特に幼少期の舌の癖には注意をしてください。舌が常に前歯に触れていると無意識のうちに前歯を押してしまい、受け口や出っ歯になる要因になってしまいます。舌の理想的な状態は上の顎に沿って収まっていることです。舌の位置を正して、悪い癖を治すことで後戻りを防止することができます。

5-2.悪い唇の癖を治そう

意外と知られていませんが、唇には歯を前方に出ないように内側へ押さえ込む役割があります。しかし、唇を噛んだり吸い込んだりする癖があると、余計に歯を押さえつけてしまい、歯並びの悪化を招いてしまいます。それとは逆なのが口呼吸です。口呼吸の場合は常に口が開けっ放しになっているので、歯を内側に抑える力が働かずに出っ歯につながります。癖は無意識に行ってしまっているので、友人や家族に協力してもらい、指摘してもらうことで治していきましょう。

5-3.日頃の姿勢を治そう

うつ伏せ寝や横向き寝、頬杖など、顎にバランス悪く力がかかってしまう癖も改善したほうがいいでしょう。些細なことのように思えますが、毎日継続的に行っていると歯列を乱す大きな要因になります。特に保定期間は歯が動きやすいので、こうした癖を改めることで後戻りを防ぐことができます。

まとめ

矯正治療だけではなく、保定をすることの重要性を知っていただけかと思います。矯正治療が終わり一休みしたい気持ちや保定装置の装着が面倒くさい気持ちも、もちろんあるでしょう。しかし最も大事なのは、しっかりと治療を完了させてきれいな歯並びで日々の生活を過ごせることです。また保定期間をサボってしまうことで、矯正治療にかけた時間やお金も無駄になってしまいます。後戻りをしないよう、最後まで気を抜かずに治療に専念していきましょう。