歯の矯正に、どんな印象をお持ちでしょうか?矯正を行うことで、ブラッシングがしやすくなるため、虫歯予防・歯周病予防にもなりますし、見た目を整えることができるため、ご自身の自信にもつながります。矯正装置には種類がありますが、ここではハーフリンガルの治療法と仕組みはどういうものなのかということから、メリットまでご紹介したいと思います。

ハーフリンガルとは、どんな治療・仕組みなのか

矯正を行う場合、どの矯正方法を選んでも歯に矯正器具をつけることになります。この矯正器具を歯の表側に着けるのか、裏側に着けるのかで治療方法が変わってきます。ハーフリンガルの場合は、上の歯は裏側に装置を付け、下の歯は表側に装置をつけるというのが特徴です。

治療費は、ラビアルという方法は矯正器具を上の歯も下の歯も表側に取り付けるタイプで、一番安く行うことができます。ただし、周りから矯正をしていることがすぐにわかってしまうため、矯正をしていることを隠したい人には向いていません。
フルリンガルは、矯正器具を上の歯も下の歯も裏側に取り付けるため、周りから矯正をしていることはバレにくくなりますが、治療費がかなりかかってしまいます。

ハーフリンガルは、ラビアルよりも見た目が気にならず、フルリンガルよりも治療費を押さえることができるというのがメリットです。

表側の矯正と比較して価格を抑えられる?

ラビアル矯正はワイヤー矯正のうちの一つですが、矯正器具(ブラケット)にも種類があります。例えば、メタルブラケット、ハイブリッドブラケット、プラスチックブラケット、ホワイトワイヤーなど。どのブラケットを選択するかによっても治療費は変わってきます。素材が大きな違いで、それぞれにメリットデメリットがありますので、素材の特徴を理解して選択する必要があります。

次に、ブラケットをどこに装着させるのかで治療費は変わってきます。先ほど説明しましたが、ラビアル(上下表側の装置)が一番安価で、フルリンガル(上下とも裏側)が一番高価です。ハーフリンガルは、ラビアルとリンガル・フルリンガルの間の金額ということになります。

マウスピース矯正と比較して価格を抑えられる?

矯正には、ワイヤーを使わないマウスピース矯正というものもあります。価格で比較をすると、値段の相場ではラビアルよりもマウスピース矯正の方が高く、ハーフリンガルよりも安いというのが一般的です。

ただし、医院によって治療費に違いがありますので、必ずしもそういうわけではありません。矯正を行う医院にてご確認ください。

ハーフリンガルを用いた矯正治療の良いところ

では、ハーフリンガルを選択することでのメリットについてもお伝えしていきます。
ラビアルではなく、ハーフリンガルを検討されるということは、矯正時の見た目を気にされているのではないかと思います。

ハーフリンガルは矯正をする時に、見た目を気にされる方にとっては、一番価格を抑えることができる方法です。器具を装着している感じが周りからわかりづらいため、矯正をしていない時と同じように過ごすことができます。ワイヤー矯正であれば仕方のない部分ではありますが、ブラケットのない部分であればブラッシングはしやすく、ブラケットがある部分のブラッシングはしにくくなります。ただ、ハーフリンガルは比較的虫歯にはなりにくいのがメリットの一つです。

また、矯正時の舌感ですが、上の歯は裏側に矯正装置をつけているため、やや舌の感覚が悪くなりますが、下の歯の矯正装置が裏側にないため、フルリンガルに比べるとましだと言えるでしょう。

まとめると、見た目はラビアルより良く、舌感はフルリンガルより良く、価格もフルリンガルよりも安いというのがメリットになります。

抜歯が必要?

抜歯については、歯並びを確認したうえでの判断になります。必ずしも抜歯が必要というわけではありません。抜歯をしなくても矯正ができる方もいらっしゃいますので、歯の状態を見させてもらった時に、抜歯が必要かどうかのお話もさせていただきます。

また、抜歯が上の歯も下の歯も必要だった場合、下の歯の抜歯が終わり、上の歯の抜歯が終わっていない状態でも、下の歯から矯正器具を取り付けることができます。抜歯を行う場合でも、全ての抜歯が終わってから矯正が始まるわけではありません。抜歯が必要でも、効率的に矯正を行うことができます。

痛みについて

患者様からよくハーフリンガルを選ぶと痛みが強いのかどうかと聞かれることがありますが、ハーフリンガルだから特別に痛いということはありません。ラビアルでも、フルリンガルでも、感じ方は同じです。

ただ矯正を行っていますので、何もしていない時と比べると圧迫感が出てしまいます。

治療中の悩み

では実際にハーフリンガルで治療を開始すると、どんな不自由が出てくるのかについても、お伝えしていきたいと思います。
ハーフリンガルは、上の歯の裏側にブラケットをつけるため、多少舌との摩擦が起きます。舌が自由に動かしづらいということもあり、滑舌が多少悪くなってしまう恐れもあります。ただ、フルリンガルに比べると、舌感はハーフリンガルの方がいいので、滑舌もまだましだと言えるでしょう。また滑舌と同じで、しゃべりにくさというのも出てきます。これは、どの矯正方法でも同じです。

次にブラケットをつけている状態ですので、どうしてもブラッシングに気をつけないと磨き残しが出てきてしまいます。虫歯にはなりにくいとはいえ、丁寧にブラッシングを心がけていないとできてしまう可能性も。矯正を行う前よりも、ブラッシングに時間をかけて、丁寧にブラッシングをすることをお勧めしています。

またワイヤー矯正は、普段は口の中にはないものを口の中に入れているため、痛みを覚えたり、物を食べる時や話をする時に無理やり動かしてしまい、口の中を噛んで口内炎ができたりすることもあります。口の中に違和感を覚えて、無理やり動かそうとするのではなく、矯正前よりも丁寧な口の使い方をすることで、痛みが出たり、口内炎ができたりというのを防ぐことができます。他にも細かいものが噛みづらかったり、硬いものが嚙み切れなかったりすることもあります。矯正中は、なるべく歯に負担の少ない食べ物を選ぶようにしましょう。

治療中の悩みの中には、こんな声もあります。ラビアルとは違い、ハーフリンガルは下の歯にしか表側に矯正器具をつけません。そのため上の歯であれば、人に見られても違和感を与えることはありませんが、大きく口を開けすぎると、下の歯も見えますので、見た目を気にしているのであれば注意が必要です。矯正していることを知られたくないのであれば、下唇で下の歯に装着しているブラケットを覆い隠すようなイメージで話をすることをお勧めします。大きく口を開けず、普段通りに話していれば、下の歯についているブラケットは気づかれにくいです。

最後に食事についてです。ブラケットを入れていると、食べやすいものと食べにくいものが、どうしても出てきます。基本的に柔らかいものは食べやすいですが、柔らかくても食べにくいものもあります。

例えば、お米はブラケットを入れた状態でも、問題なく食べることができます。ですが麺類は、前歯で噛み切ることができないので、食べる時には気を付ける必要があります。パンも噛み切らないといけないため、食べづらいものです。パンを食べる時には、小さくちぎってから食べたほうが安心です。野菜類も、生で食べると硬いため、なるべく湯がいて柔らかくしてから食べましょう。肉類は、ステーキだと噛み切れないため、ハンバーグなど噛みきり安いものを選んで食べるようにして下さい。おかず類は基本的に、噛み切る必要がないもので、一口で口の中に入れられるものの方が食べやすいので、矯正を始めた方はぜひ試してみてください。

おすすめしない方

ハーフリンガル矯正が難しい場合もあります。例えば、かみ合わせが深すぎる方、舌のサイズが極端に大きい方も、ハーフリンガル矯正は難しくなるとお伝えしています。これは、骨格の問題であったり、生まれ持ったものの問題であったりするため、対処法が難しいかもしれません。

ただ、必ずしもできないというわけではありません。処置が難しかったり、矯正をしている最中の不自由さが患者様ご自身の方で大きくなったりする可能性が高いということです。診断をしたあとで、どういった問題点が出る可能性があるのかについては、ご説明させていただきます。

デメリット

ハーフリンガルのデメリットは、ブラケットを裏側につけている上の歯です。見た目は矯正治療しているかわかりづらいものの、ブラケットを裏側につけているため、ブラッシングがしづらいのが問題です。しっかり磨いておかないと、歯肉炎になる可能性もあるので、丁寧なブラッシングをするようにお伝えさせていただいています。

矯正治療に要する時間の目安

矯正治療の期間は、ドクターの臨床経験に依存するため一概には言えません。ただ、ハーフリンガルとラビアルであれば、ラビアルの方が短いと一般的には言われています。一般的に言われてはいますが、ハーフリンガルの症例の多い医師ですと、ラビアルと治療期間が同じ、もしくは短い傾向にあります。治療期間で矯正の方法を検討するのであれば、担当医師に直接聞くのが良いでしょう。

保定の期間

矯正治療が終わった後の保定期間は、基本的にはラビアルと変わりません。ハーフリンガルでもラビアルでも、効果の違いはないということです。

最後に

矯正を行うときに、気になることといえば何でしょうか?
治療期間、治療期間中の見た目、治療中の痛み、治療中の食事、治療費、治療後の保定期間など、項目は様々ありますが、どれを重要視するかは、個人によって違います。今回お伝えした通り、ハーフリンガルは様々な観点で見ても中間のところに位置する治療法です。どれか一つの項目ではなく、すべての項目がほどほどに気になるというのであれば、ハーフリンガルがお勧めです。ぜひ一度、検討してみてはいかがでしょうか。