私たちの顔が一人ひとり違うように、歯並びもまた一人ひとり違います。そのなかでも、歯並びが悪い、噛み合わせが悪いといった状態を「不正咬合」といいます。不正咬合は見た目の印象を左右するだけでなく、滑舌や発音が悪くなったりします。
自分の歯並びがどのようなものなのかをチェックしておきましょう。

こんなにある!さまざまな不正咬合の種類

きれいな歯並びといえば、歯がきれいに並んでいて、口を閉じた時に上下の歯がきちんと噛み合っている状態ですよね。では、「悪い歯並び」とは? 
「歯並びが悪い」「噛み合わせが悪い」とひとことで言っても、種類や症状によって細かく分類されます。
さまざまな不正咬合について、順にご紹介していきましょう。

上顎前突(じょうがくぜんとつ)・出っ歯

上顎前突

正常な歯並びは、上の前歯が下の前歯よりも2ミリほど前に重なっている状態です。
上顎前突はいわゆる“出っ歯”と呼ばれ、上の歯が下の歯よりも著しく前に出ている状態を指します。
日本人に多い不正咬合で、上の歯が前に大きく傾いて生えているタイプや上顎の骨が前に突出しているタイプなどがあります。
上顎前突の原因は、上顎の骨が下顎に比べて大きかったり上顎の骨が前に突出していたりといった先天的な要因と、指しゃぶりや舌で歯の裏側を押すなど日常的な癖によって起きる後天的な要因が考えられます。

下顎前突(かがくぜんとつ)・受け口

上顎前突とは逆に、下の前歯が上の前歯よりも前に出ている状態の不正咬合を「下顎前突」または「反対咬合」といいます。
一般的に“受け口”や“しゃくれ”とも呼ばれています。
下の前歯に対して上の前歯が少し前に出る正常な歯並びと正反対の下顎前突は、滑舌が悪くなり発音がしづらくなります。
特に「サ行」の発音が難しく、極端な下顎前突に悩んでいる方のなかには、人前で話すことに抵抗を感じている方も少なくありません。
下顎前突の原因は、下顎が大きい、または上顎が小さいなど骨格の問題が大きいと考えられます。

上下顎前突(じょうかがくぜんとつ)

上下の前歯が前に突き出ている状態は、「上下顎前突」と呼ばれます。
歯が前に出ているため唇が閉じにくく、口の中が乾燥しやすくなって虫歯や歯周病のリスクが高まります。両前歯が前に出ているため噛み合わせることができるようにも思えますが、物を噛んだり噛みちぎったりという機能が弱く前歯に力が入りづらいこともあります。
前歯が前に突出しているだけであれば歯を後ろに引っ込める治療で済みますが、顎の骨が小さく前歯を引っ込めるためのスペースがない場合には抜歯が必要になることもあります。

叢生(そうせい)・でこぼこ

隣り合う歯が重なり合い、凸凹に乱れた歯並びを「叢生」や「乱ぐい歯」といいます。日本人の不正咬合の症状のなかでは最も多い症状で、顎が小さく歯の生えるスペースが十分にないところに歯が無理やり生えてきているため、ガチャガチャと重なり合って生えてしまいます。
「八重歯」もこの叢生・乱ぐい歯に当たります。
歯と歯が複雑に入り組んでいる叢生は、歯磨きやフロスがしづらく歯の奥に汚れが残りやすいので、虫歯や歯周病になるリスクが高くなります。

開咬(かいこう)

「開咬」は「オープンバイト」とも呼ばれ、歯を噛み合わせても前歯が閉じない状態の不正咬合です。
前歯が噛み合わないので食べ物を噛み切るのが難しいことや、空気が抜けて発音がしづらいなど日常生活に影響が出ます。
また、前歯が噛み合わさらないため奥歯に集中して力がかかり、奥歯が欠けたり割れたりする恐れもあります。
開咬の原因は、遺伝的など先天的な要因のほかにも、指しゃぶりや下で歯を押すなど日常生活で無意識に行なっている癖も原因の一つと考えられます。

交叉咬合(こうさこうごう)

上下の歯が部分的に互い違いになっている歯並びを「交叉咬合」といいます。前歯は上の歯が前に出ているのに奥歯は下の歯が前に出ている……というように、いくつかの歯が交叉している状態を指し、「クロスバイト」や「すれ違い咬合」などとも呼ばれます。
片側だけが交叉していたり左右均等でない場合には、力が均等にかからないため顎の関節に負担がかかり、かみ合わせがよくない状態といえます。

過蓋咬合(かがいこうごう)

上の歯が下の歯に大きくかぶさっている状態を「過蓋咬合」といいます。
下の前歯が上の前歯の裏に擦れて歯が減ってしまったり、重なりが深い場合には下の前歯が裏側の歯茎に当たり歯茎を傷つけてしまったりすることも。また、上の歯が大きく重なることで下顎が奥に押し込まれて顎関節に負担がかかることなど、さまざまな影響があります。

空隙歯列(くうげきしれつ)・すきっ歯

「空隙歯列」はいわゆる“すきっ歯”です。 顎が大きい、または顎に比べて歯が小さい場合、歯の生えるスペースが余って歯と歯の間に隙間ができてしまいます。
歯がスカスカで、まばらに生えているような状態に見えるのも空隙歯列の特徴です。
なお、空隙歯列に似た症状で「正中離開」がありますが、こちらは前歯の2つの間に隙間ができる状態のこと。空隙歯列は、全体的に歯と歯の間に隙間が生じている状態を指します。
空隙歯列は歯と歯の間から空気が漏れるため、発音に大きく支障がでます。また、歯と歯の隙間が大きく上下の歯がしっかりと噛み合わないため、食べ物を上手く噛みきれなかったりうまく咀嚼できなかったりと、食事に影響を及ぼすことも考えられます。

不正咬合が全身にもたらす悪影響

不正咬合は、見た目の問題だけでなく、運動機能や食生活、健康にも影響をおよぼすこともあります。
ここでは、不正咬合が体に与える影響を5つご紹介します。

1.虫歯・歯周病のリスクが高まる

不正咬合の大きな影響の一つが、虫歯・歯周病のリスクです。 歯並びが悪いと歯の隙間に汚れや食べ物の欠片(食べかす)が詰まりやすくなります。歯と歯が重なり合った部分は歯ブラシやフロスが届きにくいため、たとえ頻繁に歯磨きを行っても十分に汚れを落とすことができず、虫歯や歯周病になりやすいといわれています。
また、唾液は虫歯や歯周病の原因を洗い流す役割もありますが、歯並びのせいで口が閉じず常に口が開いてしまう人は、口の中が乾燥しやすくなり、それによって唾液の働きが低下し虫歯や歯周病が進行しやすくなります。

2.口臭がひどくなる

歯と歯が複雑に入り組んでいる不正咬合は、隅々まで歯ブラシが届かず、十分に汚れを取り除くことができません。
食べ物のカスや汚れが付着したままになると雑菌が繁殖し、口臭の原因になってしまいます。
また、歯並びの悪く常に口が開いた状態も、口の中が乾いて雑菌が繁殖する原因に。虫歯や歯周病と同じように、不正咬合は口臭トラブルも引き起こしてしまう可能性もあります。

3.胃腸に負担がかかる

歯と歯が正しくかみ合わさっていないと、食べ物を噛み切ったり噛み砕いたりすることが難しくなるため、消化器官である胃腸に負担がかかってしまいます。
また、私たちの体は噛むことで唾液を分泌し唾液が食べ物を消化しやすい状態にしてから胃に送りますが、噛み合わせが悪いと唾液の分泌量が減少し、消化する力が弱まるとも言われています。

4.歯が欠けたり折れたりする

歯並びや噛み合わせが悪いと、噛み合わさっている一部の歯に集中的に力が加わります。
強い力が加わり続けた歯は、やがて欠けたり折れたりすることもあります。
歯並びや噛み合わせの悪さによって歯同士が強く触れあったり擦れたりすると、歯がすり減って削れたり歯茎が傷ついたりすることもあります。

5.その他:精神的ストレス

歯並びや噛み合わせの悪さは、精神的なストレスにもつながります。
歯並びが悪いことを気にして人前で笑ったり口を開けたりするのが嫌になる、歯並びを見られたくなくて人と接するのが嫌だ、滑舌が悪く人と話したくない、人と比べて強いコンプレックスを感じてしまう……など、歯並びによって精神的なストレスを感じている人は非常に多いといえます。
ストレスが積み重なり、消極的な性格になる、社交的でなくなる、自信が持てなくなど、その人の人生に大きく影響を与えてしてしまうこともけして少なくありません。
歯並びや噛み合わせは、私たちの生活に大きく、とても密接に関係していると考えられますね。

歯列矯正で、体と心への負担を減らしましょう

こうした不正咬合は、歯列矯正によって改善することができます。
子どものうちに行うイメージの強い歯列矯正ですが、大人になってから行う人もたくさんいます。
大人の歯列矯正の場合、通常の金属製の器具以外にも透明のもの、歯の裏側だけや気になる歯だけに矯正器具を装着する矯正方法もあります。
自分の生活スタイルに合わせた歯列矯正を行うことで、仕事やプライベートにも支障が出ないよう治療を進めることができますし、早く行えばその分治療も早く終了し、歯並びや噛み合わせに対する悩みから解放されます。
これまでの悩みや身体的負担が、数ヶ月から数年の治療で軽減されるかもしれません。
歯並びが気になっている方や歯列矯正に興味がある方は、一度歯科医院に相談してみることをオススメいたします。