サマリー
川崎市武蔵小杉にお住まいの30代女性が、口元の突出感と前歯で物が噛めないことを主訴に来院された症例です。診断名は「叢生を伴う上顎前突症」でした。精密検査の結果、上顎第一小臼歯2本を抜歯したうえで表側矯正(マルチブラケット装置)での治療が可能と判断し、約2年(治療費総額約95万円)でオーバージェットを8.0mmから2.0mmへ改善しました。
出っ歯(上顎前突)のすべてが抜歯を必要とするわけではありません。
本症例では、オーバージェットの大きさ、上顎前歯の傾斜角度、骨格の状態から、抜歯を伴う治療が適した条件がそろっていたことが、治療方針決定のポイントでした。
30代からでも出っ歯(上顎前突)の口元は改善できる?
「矯正は子どものうちにやるもの」「成人してからの口元の改善は難しい」と考えられることがあります。確かに、骨格の成長を利用した治療は成長期にしかできないため、成長期の治療とは方針が変わります。
一方で、成人だから口元を改善できないわけではありません。歯を並べるスペースをどう確保するか、前歯をどこまで後方へ移動させるか、歯周組織が移動に耐えられるかを精密検査で確認することで、成人でも口元のバランスを整えられる症例があります。
抜歯を行うかどうかは、装置や年齢ではなく、その症例の条件によって決まります。本症例では、口元の突出感を改善するため上顎第一小臼歯2本を抜歯し、表側矯正で治療を行いました。
出っ歯(上顎前突)とはどんな状態?
出っ歯(上顎前突)とは、上の前歯が下の前歯より前方へ突出している状態をいいます。上下前歯の水平的な距離をオーバージェットと呼び、基準値は約2.0mmとされています。
前歯の傾きだけが原因の場合もあれば、上下顎の骨格的な前後差や、歯列全体の前突が関係している場合もあります。口唇が閉じにくくなることで口呼吸になりやすく、前歯で食物を噛み切りにくいなど、見た目だけでなく機能面にも影響することがあります。
今回の患者さんは、口元の突出感に加えて、前歯で物が噛めないことの改善を希望されていました。
患者さんの情報
| 年代 | 30代 |
| 性別 | 女性 |
| 地域 | 川崎市(武蔵小杉) |
| 主訴 | 口元の突出感、前歯で物が噛めない |
| 診断名 | 叢生を伴う上顎前突症 |
| 使用装置 | 表側矯正装置(マルチブラケット装置) |
| 治療期間 | 約2年(通院間隔 1〜1.5か月) |
| 治療費 | 約95万円 |
| 抜歯の有無 | あり(上顎左右第一小臼歯) |
初診時の状態
初診時には、オーバージェットが約8.0mmと基準値の約2.0mmから大きく乖離しており、上顎前歯部には叢生が認められました。口唇の閉鎖が困難で、前歯部での咬断ができない状態でした。
なぜ抜歯を伴う表側矯正を選んだのか?
本症例では、上顎第一小臼歯2本を抜歯したうえで、表側矯正を選択しました。理由は主に2つあります。
1つ目は、前歯を後方へ移動させるスペースが必要だったことです。 オーバージェットが8.0mmと基準値から大きく乖離しており、口元の突出感を改善するには前歯の後方移動量を確保する必要がありました。
2つ目は、抜歯スペースで叢生と前突を同時に解消できると判断したことです。 上顎前歯部の叢生と前突の両方に対して、抜歯によって得られたスペースを配分することで、一連の治療で改善できる条件がありました。
なお、すべての出っ歯が抜歯を必要とするわけではありません。オーバージェットの量、前歯の傾き、骨格、口元の突出量によって、適した治療方針は変わります。
治療結果
治療後は、上顎前歯が後方へ移動し、オーバージェットは約8.0mmから2.0mmへ変化しました。上顎前歯部の叢生も解消しています。
口元については、突出感が改善し、口唇を自然に閉鎖できる状態となりました。前歯部での咬合も得られています。
治療前に主訴とされていた口元の突出感と前歯で噛めない状態は、いずれも改善しました。
なお、治療結果には個人差があり、同様の症例でも同じ結果になるとは限りません。
院長より
今回の症例で重要だったのは、初診時の精密検査でオーバージェット、上顎前歯の傾斜角度、骨格の状態を正確に把握できたことです。
成人の抜歯症例は、歯周組織の状態によって移動できる範囲が変わるため、治療前の診査が結果を左右します。本症例では歯周組織の条件が整っており、抜歯スペースを利用した前歯の後方移動が可能と判断しました。
出っ歯の治療で大切なのは、「抜歯が必要かどうか」を見極める診断です。装置や年齢だけで治療結果が決まるわけではなく、オーバージェット、前歯の傾斜、骨格、口元のバランスを正確に把握することが重要です。
成人になってから口元が気になり始めた場合でも、症例によっては改善できることがあります。ただし、すべての症例で同じ方針になるわけではないため、精密検査を受けたうえでご相談ください。
Before-After
術前
術後
術前
術後
よくある質問
本症例の治療期間は約2年でした。通院間隔は1〜1.5か月ごとです。
抜歯が必要かどうかは症例によって異なります。本症例では、口元の突出感を改善するため上顎第一小臼歯2本を抜歯しました。抜歯の要否は、オーバージェットの量、前歯の傾き、口元のバランス、骨格などを確認して判断します。
成人でも矯正治療は可能です。本症例は30歳から治療を開始し、約2年で口元のバランスを整えています。ただし、歯周組織の状態や骨格によって適応や治療方針は異なるため、精密検査が必要です。
ワイヤー交換後に3〜5日程度の痛みが出ることがありますが、個人差があります。痛みが強い場合は鎮痛剤を服用いただくことが可能で、食事は軟らかいものをお勧めしています。
裏側矯正やマウスピース型矯正装置など、装置が目立ちにくい方法もあります。ただし、抜歯を伴う大きな移動が必要な症例では適応が限られる場合があります。
正治療には、歯根吸収、歯肉退縮、アンキローシス、歯髄壊死、顎関節症などのリスクがあります。症例ごとにリスクは異なるため、精密検査を行ったうえで治療方針を検討します。
後戻りは起こる可能性があります。装置除去後は保定装置(リテーナー)を一定期間使用していただき、歯の位置を安定させます。
リスク・副作用
矯正治療には、以下のようなリスク・副作用があります。
- 装置装着後に痛みや不快感が生じることがあります
- 歯の動き方には個人差があり、治療期間が延長する可能性があります
- 装置により清掃が難しくなり、う蝕・歯周病のリスクが高まります
- 歯根吸収(歯の根が短くなる症状)
- 歯肉退縮(歯茎が下がる症状)
- アンキローシス(歯と骨が癒着し歯が動かなくなる状態)
- 歯髄壊死(歯の神経が失活してしまう状態)
- 顎関節症(顎の痛み)
- 抜歯を伴うため、抜歯部位の疼痛・腫脹等が生じることがあります
- 装置除去後はリテーナーの使用状況により後戻りが生じることがあります





